“給料減るじゃん”にどう応えるか。意識改革と仕組みづくり。
──休憩を増やしたり労働時間を縮めていくため、どんなことに取り組んだのでしょう?
やっぱりドライバーの意識。
うちだけじゃないと思うんですけど、やっぱり昔ながらの運送会社って出発時間はドライバーまかせ。
特にベテランドライバーって自分の経験値から、いろんなトラブルがあるから、本当は5時に出ればいいものを3時に出たりとかね。
ベテランになればなるほど早く出てく傾向にあるというか。
リスクを知ってるから、早く出たがるんだけどやっぱりそこの管理ができてないとめちゃくちゃ長時間労働になる。
だから最初に手をつけたのはそこだったかな。
わるいけど、出発時間はもう会社が決めると。
みんなの意見を聞いて決めると。
じゃあAという地点に5人に行かせたい時に、大体何時に出れば余裕を持って着いて向こうでもある程度休憩が取れて間に合うか、っていうのをちゃんとヒアリングして。
じゃあここだったら5時でいいよね、逆に遅れてもあなたたちドライバーの責任じゃない、5時に出ろって言ったのは会社なんだから会社が全部責任を取る、と。
それを1個1個 やっていって、そうするだけでも拘束時間っていうのはだいぶコントロールできる。
ケツっていうのも名古屋港は独特で、なかなか渋滞がひどかったり、待機時間が長かったりするんで、できればその拘束時間を後に使いたい。
出発時間で管理できなくなるともうくちゃくちゃになるんで。
ケツはどんだけ伸びるか不確実なんで、まずは朝を決めて、そこで拘束時間13時間超えそうな時には車の手配を変えて、13時間を超えないようにコントロールしていったら、拘束時間はおのずと減ってく。
そういうことを地道にやってくことで、かなり減りましたね。
港が混むとかそういうのは僕らの力じゃどうしようもないことですけど、自分たちの力でできるところを短くしてくっていう努力、「しょうがない」はダメですね。
その中でもできることはあるだろうってことでみんなが意識してくれたのがでかかったですね。
あとはやっぱり完全出勤2日にするだけでも土曜日の出勤が減るんで。
──完全週休2日制も決して簡単なことではないですよね?
めちゃめちゃ大変でしたね。
ドライバーからめちゃめちゃ反発きましたね。
「いや無理でしょそんなの」「絶対こんだけの物量を回せないでしょ」「給料減るじゃん」って。
でも冷静に考えてくださいよって。
休みを増やすってことは、普段平日の残業時間の単価が上がるということ。
土日祝の仕事がゼロなわけじゃないから、どうしても稼ぎたければそういったところでお願いした時に、積極的に出てくれれば休日手当ても出るでしょ?
あと今やってるのは点呼係を増やすこと。
ドライバーに補助者講習へ行かせて。
希望者が今10人ぐらいいるのかな。
それで稼ぎたい人は運行前に点呼係をやってくれれば、1日1時間でも2時間でも給料の足しになるじゃないですか。
残業で稼ぎたいっていう人は、資格もしくは講習へ行って、そこでお給料をつけますよってことで納得していただいて。
今はいいリズムでまわってますよ。
土日祝みんなきっちり休むからね。
だからやっぱりね、「休みのために働かないと」っていうのが僕の考えなんで。
「次の休みは何をしよう」って休みを楽しみにするぐらい。
うちの事務所すごいですよ?
平日も17時になったらほとんど一斉に帰るからね。どうしても会合とかあればしょうがないけど、僕も極力子供と夕飯を食べたいって思ってる。
経営者は休みたくないわけじゃなくて、経営者だって休みたい。
今の若い世代の経営者がどういう感覚なのか、どっちよりなのかが分かんないけど、やっぱり社長だってね、辛い思いはいつだって嫌でもするんだからさ。
だからやっぱり自分の人生も豊かにしないと。
社長が不健康でなんかめっちゃ死にそうな感じになっとったら、「ええかなこの会社?」ってなるだろうしね。
僕が思ってるってことは社員だって絶対にそうじゃないですか、帰って何かしたいことがあるはずだから。
──取り組みの成果もあって若いドライバーさんも増えてきたとお聞きしました。
入ってきてくれてますね。
年齢的には30代ぐらいの子はちょこちょこ入ってくれるようになったし。
この前なんか男性のドライバーが会社に入ってから結婚してお子さんができて、ずっと半年ぐらい育休取ってましたからね。それがすごく嬉しくて。
うちに入ってから結婚して子供を産んでまた戻ってきてくれる。
新和で働けば安心、多少そういう安心感を感じてくれてるからまた戻ってきてくれる。
大変だったけどね、ドライバーの車両1台半年間止まってたわけだから(笑)。でもなんか嬉しいなと思ってね。
だからそういうね、「新和に入れたらもう安泰だ」じゃないけど、ちゃんとしてるんだって思ってくれる、そうやって入ってきてくれる子が1人でも増えればなと思ってます。
幹部たちが自ら動く組織へ。
──点呼からはじまった様々な取り組み、ここまで何年ぐらいかかったんですか?
専務の時代からだからもう10年ぐらいかなあ。
最初和田さんにデジタコ入れてって言われたんだけど、僕の考えはデジタコ入れれば良くなるわけじゃないんですよね、ただ管理がしやすくなるだけで。
やっぱり根本的にドライバーの意識とか社員の意識を変えて、なんでこれをやらなかんのかを教えてから、デジタコでちゃんと管理もできる、効率が良くなったね、じゃないとダメだと思うんで。
なのでデジタコもだいぶ遅かったですもん。
本当に大変だったけど、それまでは全部手書きで管理しとったからね。
でもこれならいけるかもって入れたらやっぱり、しっかり労務管理ソフトも入って、今はもうそれが引き継げて、もう僕は一切タッチしてないです。
部長が毎月10日ごとにちゃんとチェックしてくれるんで。
みんなの意識が変わってやっとこの10何年で部長までそういう意識になってくれて、ちゃんとチェックしてくれる体制が整った。
なので、運賃交渉もしかり、労働時間の短縮もしかり、僕が動かなくてももう幹部連中がみんなやってくれる。
じゃないと僕1人の力では多分叶えられなかったと思うんで。
彼らが意識をして、ドライバーも「うちの会社はちゃんとできてる、それを守らなくちゃいけないんだ、ちゃんと守ってお給料になるんだ」みたいな。
だから完全週休2日も導入できたし、残業時間も60時間を超えるドライバーはほとんどいなくなったし。
じゃあお給料少ないかって言うと僕はドライバーの給料に結構自信持ってるんですよ。
「新和で働けば給料いいぞ」っていうイメージをもっとつけていきたいなと思ってるんで。
だからもっと僕はドライバー、リフトマン、整備士の地位向上というかね。
いい仕事にしていきたいなと思ってますね。