ドライバー未経験・異業種から転職してきたからこその苦労
──若尾社長はドライバー経験者じゃないことも、苦労があったんじゃないですか?
本当、めちゃくちゃ言われましたよ。
我が社は運送会社と整備会社と作業会社とあって、僕はまず運送会社に入ったんだけど、恥ずかしい話、やっぱり人を育てるってことが得意じゃない人たちなんで。
僕が入ってもポツンと1日中椅子に座らされて、トレーラーのマニュアルとかわけのわからん本を読まされて、何を教えてもらうのか全然わからん感じで。
例えばね、「自重って何ですか?」って質問したら、「おい自重って言っとるぞこいつ(笑)」「そんなこともわからんのか」みたいな。
めちゃめちゃいじめられて。
見かねた当時の番頭が、ちょっと整備の方へ行けと。ちょうど整備会社のフロントマンがやめちゃって、右も左も知らない中で僕はフロントマンをやることになって。
整備会社の仕事のやり取りからお客さんの対応から僕は全部一手にやって。
それこそそこでも言われましたよ?
「何やっとんの事務所で?」って。
「整備会社に入ったなら、つなぎ着て作業しなかんのじゃないの?」みたいなね。
めちゃくちゃ冷たい目で見られた。
トレーラーもね、車両のクラッチ焼きながらね、バックして整備工場に入れるのとか全部やって、みんなに笑われながら「おいあいつクラッチ焼きそうだぞ」みたいなね、言われながら(笑)
そうやって整備工場で3年4年やってね、だいぶ車両のことも覚えて、仕組みとか、何が大変かも分かったし、そうこうしとるうちに運送会社に戻ってっていう形でね、最初は非常に大変でしたね。
やっぱり創業者がパワフルな人で、自分でトラックに乗ってイチから始めた。
創業者の時からいるドライバーがいるんで、こうだったああだったって、創業者と比べられる。
やっぱ社長はトラックに乗ってなんぼだろう、みたいなね。
だけど、僕は僕しかやれないし、僕しかやれないことはあると思ったしね。
やれないことを無理にやったってしょうがないし。
だから僕はもう数字や理詰めで行くしかないなと思って。整備工場だってそう。
整備会社も当時は非常に長時間労働でね、売上はあったけど全然赤字で。
なんでかって言ったらやっぱり経営の管理がされてなくて、不良在庫ばっかあったりとかね。
売上至上主義で、売上あげればいいみたいな、そういったところも全部改革していって。
不良在庫があればそんだけ経営を圧迫するから、まずは不良在庫をなくそうとかね。整備の出戻りや作業ミスをなくそうとか、もっと予定をしっかり立ててこうとか、そういうとこから全部やって、数字が出て結果が出ると「言っとったことはこういうことか‥」みたいな。
やっぱりそこはでかかったですね。
みんながやったことに対して結果が出る、何を目標にしてるか、何が足らんのか、どこを目指せばいいか、っていうのが、僕が唯一できることだったんでね。
運転で見せるとかそういうことができない分、こうやってやるんだぞって言えない分ね、社員たちを評価すること、還元すること、意思決定と仕組みをつくることが僕にできることだから。
失敗したらやり直しゃいいんですよ。
僕も神様じゃないんで、僕が言ったことが正解ってわけじゃないんで。
1番いかんのは何もやらないこと。動かないこと。
週休2日にしてみようか、って失敗したら戻せばいいじゃないですか。
ごめんねって、失敗だったわ、って言えばいいんだから。誰も死ぬわけじゃない。
それで休日出金手当てが増えるだけ。
この前もやる前から「できないできない」って言っとった社員がおって、それを上層部が怒ってくれたんですよ。
僕の言う前にね。「いやお前さ、なんでもあれはこれであれでこれでって言う前に、どうやってやったらできるかを考えろ」って。
僕が伝えた経営理念がちゃんと伝わっとって。
めっちゃ嬉しいやんと思って。経営理念に沿って、みんなが考えて動くって風にちょっとでも浸透してっとんだなと思ってね。
やっぱりそれが大きいです、みんなが理解してくれた、伝わったってのが。
なんかでもあっと言う間でしたわ、本当、10年。
マジでぶっ倒れた時あったもんな俺も。本当にさ、やっぱりね、作業会社とかで従業員が亡くなっちゃったりいろんなことがあって、もうやべえなと思ってぶっ倒れたこともあったけど、でもやっぱりその時はみんな支えてくれたしね、家族も支えてくれたし、みんなのおかげでね、なんとか今があります。
──組織作りや育成面で、今でも苦労されてることはあるんですか?
苦労しますね。
やっぱりどこまでいっても今の幹部っていうのは先代の時に入ってきた人なんで、僕が1から育ててないんですよね。
もちろん僕より年上だし。10も年上の先輩方が今部長クラスでやってるんで。
僕の同世代、40代前後の子を徐々に入れながら教育してますけど、やっぱり非常に大変。こういったちっちゃい会社だと教えるマニュアルだってないし。
やっぱ昔の人たちなんで特に名古屋港なんで‥やっぱりね、言葉も荒くなっちゃう。
一流企業みたいに、新卒の子ばかり入ってくる会社じゃないんで、やっぱりいろんな方がいるんでね。
そういった中でひとつみんなが理解してくれたのは、僕は社長になった時に、利益が出たら絶対ちゃんとみんなに還元すると、でも利益が出ないと還元できないからってことで、会社の収支を全部オープンにしたんですよね。
幹部連中には、売上とは、粗利とは、営業利益とは、減価償却とは、みたいなのを1から教えてやっと理解してくれて。ちゃんと数字の目標を立てて、達成できたら僕が還元して、っていうので「社長、言ったことちゃんとやってくれるじゃん」っていうので、わかってくれたから、今はついてきてくれるようになった。
だから一緒じゃないですか。
数字をよくするのと、乗務基準を守るってことは一緒なんでね。
どっちがどっちでもダメなんですよね。
数字さえよければいいって会社もダメだし、業務基準だけしっかり守ったって利益あげれなダメだし。
やっぱりこの両輪がしっかりね、いい風に回ってかないと難しい業界だと思うんで。
彼らも昔から意識は高かったんでね。
意識高く、自分の仕事にプライドは持ってたんで。だからあなたたちがやってる仕事は素晴らしい仕事だよってこと、それは絶対評価するってことで、今なんとかうまくいきかけてるのかなと思ってますけどね。
若手の教育も、営業、倉庫の方で1人とトラックの方の配車マンと海上コンテナのドライバーをまとめてるリーダーと、だいぶ僕の同世代になってきたんで、そこが辞めずにうまく上がってってくれれば、僕の世代でちゃんと育つのかなと思ってますけどね。
とはいえ大変ですわ(笑)
お客さんとドライバーとの間に挟まれて手配を組むとか、僕からは数字のことを言われるわけでしょ?
3方向から言われるから。ただその分やっぱりちゃんと評価するっていうので、やってってくれてるのかなと思いますけどね。
本音で語れる場が生む信頼関係と組織の強さ。
──トラマネの活動でよかったこと・印象に残っていることは?
僕は瀬尾さんに出会えたことですね。
瀬尾さんのいいところを、僕すぐに盗んじゃうんだけどさ、同世代でこんなに素晴らしい会社経営をされてる、本当に素晴らしいと思う。
まったくタイプが違うからね。
瀬尾さんは運送業一家で、お父さんからやられててその背中を見ながら育った、ザ・運送会社の社長さん。
僕は逆に異色だからね、だからすごく尊敬してる。
羨ましいもん。
自分の背中で見せれる、こうやってやるんだ、ってね。
トラマネに入って1番でかかったのやっぱ瀬尾さんに出会えて、色々そういった車両管理のこともだし、ドライバーの管理とか。
この前も写真撮りまくったけど、評価の資料とかさ。
そういうことが吸収できる、もうそれだけでトラマネの価値だと思うな。
面白いですからね、運送のことだけじゃない。
運送に繋がることすべて。
人の管理から車両管理からね、運賃交渉はこうやってるよ、ああやってるよ。
社長のメンタルの保ち方まで色々ね。
トラック協会で役員もやってますけど、なかなかそういう場面では話せないもん。
こういうトラマネで話してるようなことは絶対に。
僕、トラマネ終わってからの食事会がめちゃめちゃ好きで。
お酒飲みながら飯食いながらね、本当にいろんなこと話せる。
くだらない話もするじゃないですか体脂肪がいくつとかさ(笑)
だからね、ああいう会議室もいいけど会議の後のああいう時間っていうのもセットでね、僕は大好きだな。
あとあれ好きでしたね、トラマネの模擬監査。
会員の会社を覗きに行けるのは面白いと思う。
もちろんね、悪いとこも見えるし良いとこも見えるし、やっぱり僕も最初は恥ずかしかったけど、ありのままを見てもらってご指摘いただく、っていうのは必要かなって。
トラック協会とかそんなことやってないからね。
みんな1か所どっかに集まってセミナーはやるけど、よっぽど親しくなけりゃ嫌がるよ。
だって会員に見られるんだよ?
見られて結構言われる。
「これいいの?」とか「あれいいの?」とか。
だからトラマネはカチっとレジュメがあって、カチっと何かやりました、っていうのが好きな人はちょっと違うと思うかもしれない。
セミナーみたいにね。
今日はこのことについて話しますって言ってきっちりやるわけじゃないんで。
そこを求めてくると肩透かしくらっちゃうのかなと。
逆に本当に良くしたいという志のある経営者だったら、「見て欲しい」って思うはずだもん。だって、もしね、悪いところ直したいって言うんだったら悪いとこはどこなのか、模擬監査して「これだったら何日くらうよ」みたいな、言ってもらった方が。
瀬尾さんもそうだと思うけど、監査ウェルカムだからね、我が社も。
来てもらって指摘されたら直せばいい、悪いところ教えて欲しいぐらい。
ビビって横着なことするとかじゃなくて、正々堂々と直してけばいい。
正々堂々と営業停止くらって直す。直せばいいんだもん。
同じ志を持つ仲間がいる。必ず変われる。
同じように、まったくできてないけど変えたくて、どうしようって、誰にも聞けんなって、右も左もわからない若い経営者ってめちゃめちゃいると思うんですよね。
トラック協会すら行けない子もいるじゃないですか。
そういう子たちが路頭に迷って諦めちゃう。
トラマネ協会って、そういう人たちへ向けた助け舟というか、同じ志をもった集まりっていうこと。
正直、僕はトラック協会とかにも参加してるんですよ。
やっぱりセミナーとかはやってくれるけど、どうしても表面上のこと。
経営者同士が膝を突き合わせて自分の会社のことをしっかりオープンにして話し合えるっていうのはなかなかないんで..
そこがやっぱりトラマネの大きな魅力。
ここで相談すれば同じ悩みをもった仲間がいる。
「こんなことまで話しちゃっていんだ」、みたいなね。
カッコつけなくていい。
それを解決してきた先輩がいる、実績がある。
絶対に変わる。
頑張れば変わるし、今がだめでも、ちょっとずつやっていけば絶対にかわる。助け合える。
本当にね、孤独を感じてたんですよ僕。
その孤独はトラマネに入ってくれれば解消するっていうのは間違いない。
のぞきにくるだけでもいいんで。
経営者ってただでさえ孤独だけど、いざこうやって2代目・3代目になったときに、やっぱり従業員を巻き込んでやるエネルギーっていうのは..ここで心が折れちゃう子っていると思うんですよ。
だけどこうやって外で、同世代やいろんな世代の人が集まって、同じ運送業でもいろんな種類の荷物を運んでて、岐阜の会員もいれば弥富、名古屋、三河。
みんないろんな貨物を運んでるからいろんな話が聞けるし、それはもうめちゃめちゃ僕にとっては貴重な時間なんで。
もったいないもん、せっかく継ごうと思った経営者が潰れてっちゃったり、事故起こして大変なことになっちゃうとか。
ドライバーさんも気の毒だし家族も気の毒だし、そういう運送会社が一件でも減って、逆にいい運送会社が1件でも増えればいいなと本当に心から思ってます。