丸幸運輸株式会社

長時間労働の青果物業界で
労働時間短縮に挑戦している後継者

丸幸運輸株式会社

代表取締役 炭竃 光希

企業情報
丸幸運輸株式会社
本社:岐阜県羽島市正木町曲利1002番地
https://www.marukogr.co.jp/

INTERVIEW

青果輸送の難しさと、人が定着しにくい現実

──青果は運送業のなかでもすごく大変だということをお聞きしています。

運送業界自体、機械でパレットに積んでリフト積みリフト降ろしで、っていうのが主流じゃないですか。
ただ青果は野菜が出荷する時の数量が農家さんが農協さんへ持ってくるまで数が分かんないんですよね。
で、持ってきたものをその場でいくつ売ってみたいなことを決めるので、当日になるまで数量が分からなくて。
結局パレットに積み替えるっていう作業ができないんですよね。
なんで、持ってきたものをそのまま市場の出荷パレットに積んでそのまま出荷するとか、一旦そのまま冷蔵庫に入れておいて出荷するみたいな。

農協さんもそうですし、農家さんもそうですし、もちろん運送会社もなんですけど、野菜を運ぶ業者全体的に、積み替えられるだけの人手もいないんです。作るところにも 管理するところにも、それを運ぶところにも。
運送会社でパレットに無理に積んだりっていうのもあったんですけれど、やっぱり積むことを想定された箱じゃないんで、棒積みって呼ばれるまっすぐ上に積んでいくことしかできない。
それをリフトで動かすってなるとかなり背が高くなっちゃうんで、技術も必要になってきて。
初めて入るドライバーだとブドウとかマスカットとか桃とかをそのままバーンとパレットごと倒して、パレットひと山になるとフルーツだとやっぱ100万円近くしちゃうんで、弁金が..っていうのも多かったですね。

工業製品みたいに規格が決まっているわけではなく、製品は一緒でも品目の名前とかが変わったりすると、また箱が変わったりする。同じシーズン中でもキノコとかだと3、4回変わって箱のサイズも変わって重さも変わったりするんで。
そういうのでミスしちゃったりすると「もう俺やめる」みたいな、多いですね。
せっかく入ってきてくれても自信がないって、教え始めてすぐに辞めちゃったりとか本当に多いんで。

──時間管理に対する意識も他の業界とは違うとお聞きしました。

そうですね、かなり違います。

昔からそうなんですけど、野菜と鮮魚は新鮮なうちに運べ、みたいな風潮っていうか空気感がありまして。
積んだら即走って休憩もなしにそのまま降ろしに行って、降ろしたら次の降ろし先行って、全部降ろしてからやっと休憩しようみたいな感じなんで。
4時間ごとの休憩とかその必要性っていうのがもうみんなふわっとしてるんですよね。
平気で40分ぶっちぎって5時間近く経ってからちょっと休憩してみたりとか。
休憩ももう10分休めばいいだろうみたいな者もいますし。

時間の感覚と言いますか、当日そのまま積んで1 回休んで、その後翌朝降ろしっていうのが基本的にはないんで、その辺が違うのかなあと。

──やはり独特な業界、ということなのでしょうか。

野菜が多かった頃は、やっぱり農家さんとかも、「こんだけ荷物出したっとるんにええやろ」みたいな感覚で仕事をやらせてて、それにどこの運送会社もペコペコしながら仕事をもらうことが多かったんですけど。

昔は数量があって、やっぱり一社単位の運賃も良かったんですよ。
それこそ創業当時とかは青果物業界も積載とかも関係なかったんで採算があったんですけど。
今は積載も時間も厳しいですから、競りに間に合わせるように行くように言うんですけれど、もう青果物の競り自体がないんですよ。
なんでもう朝一着じゃなくてもいいんじゃないかとか、もうその日のものをその日に出すんじゃなくて、翌日出せばいいんじゃないかみたいな。

──量が減ったのに単価が上がらないことも含め、時代に追いついていないと

そうですそうです。ちょっとずつ変わってきてはくれてるんですけれど。
受ける市場側も、物を置く場所がないんですよ。
なので物量が一気にドカッと増えてきた時に、市場の人が欲しいものだけ降ろしていらないものは「待っとれ」とか言われて、自分から言い出さないと、本当にもう平気で半日とか待っちゃうんで。
自主的にグイグイ行く、それこそ昔のドライバーじゃないですけど、ガツガツ行くようなタイプのドライバーじゃないと仕事ができないんですよね。
本当に待っちゃうんでずっと。

市場の方もやっぱり人がいないんで。
若い人とかももういなくて、市場が調子良かった時期の年代の方々が今ちょうどパタパタパタと辞められてるんで、これからどうするんだみたいな話にはなってますね。

市場自体老朽化激しいのもそうですし、お金がないんで。
昔はどこのスーパーでも市場を通さないと野菜って買えなかったんですよ。
でももう今スーパーが直接農家さんから買っちゃうんで。
でお金自体がなくなって、立て直しもできないし。

で、市場の中で競りをする時って、岐阜だったら丸果と岐果っていう、市場の中にだいたい2社あるんですよ。
そこの2つが競り合って勝った方が、その市場の中で来期は範囲をちょっと余分に取れる、今期は負けたから余分に取られるみたいなのがあって、お互い競り合ってやってたんですけれど、やっぱりお互いやっていけないもんですから、今どこの市場も地方市場とかは合併しちゃって、ひとつになっちゃってるんですよ。
それで競りがなくなっちゃって、元気はどんどんなくなってってますね。

うまくいっている運送会社は、どうやっているのか?

──そんな中でもなんとかしようとトラマネに。トラマネに入会された経緯を教えてください。

もともと和田さんにうちの労務の方を見ていただいてて、僕が入社させてもらってから、お話を聞くようになって。
興味があってホームページを見させてもらったら、だいぶ厳しいことが書かれてたんで、うちだとちょっと難しいかなと思ったんですけど。

でも時間の管理とか、他社さんがどうやられてるかが結局わからなくて。
自社の方で色々取り組もうとはしてたんですけれど、うまくいかないことが多かったんで。じゃあうまくいってる企業さんはどういう風にやられてるのかなっていうのを調べてて。知り合いの運送会社さんにも聞いたりはしてたんですけれど、やっぱりあんまり本当のことは言わないんで。
耳障りのいいことは聞くんですけれど、本当かな?っていうようなことが多いんで。
実際トラマネに入らせてもらって、他の会社さんがどういう風に取り組まれてるかとか、実例とか、実際にこういう風に社員さんにお願いしてるみたいな様式とかも見せてもらって、他の会社さんの社員さんの生の声とかも聞いて、モチベーションの高さがすごいんで、いいなっていう(笑)
やっぱりみなさん苦労されてるんだな‥っていうのもわかりますし。

──業界の大変さもあるうえで、3代目後継者ならではの大変さもあると思います。

そうですね。やっぱりみんな年上なんで。
僕が入った時は同い年の子が1人いるだけで、それ以外の人は全員年上、自分より30とか40上がざらだったんで、ちょっと接しにくさというか、例えばちょっとミスした時でも怒りづらいんですよね、他の会社さんでも皆さんそうだと思うんですけど。

運行管理の方もやってるんですけれど、入ってすぐの時はちょっと指導しにくかったり、デジタコ見て「これパチンコ行ってるな..」と思いながら、かと言ってそれやめろって言うと、言い返された時のことがちょっとあれで言えなかったりとかしたんですけれど。

今トラマネで色々と学ばせてもらって、すごく真理だなと思ったのは、言うことを聞かない人がなんか言ってきたりしても、その人に辞めてもらった方が会社の雰囲気は絶対に良くなるみたいな話があったんですよ。
1人すごい悪いドライバーがいると、全員が悪くなってしまうみたいな話を聞いて。
確かにそのとおりだなと思って。それでそのドライバーにも遠慮せずに言えるようになったんで。
ちょっとそこは一歩成長できたのかなと思います。

──他の会員さんから色々アドバイスをもらっているんですね。

これは業界を知らなかった僕の偏見だったんですけど、港の運送会社さんって怖いイメージがあったんですよ。
積載も守らないし荒っぽい運転をされる方が多いのかなというのを思ってたんですけれど。
若尾さんが労働時間をすごいガチガチに守られるじゃないですか。
で「うちでもできたんだから青果物でもできるよ!」っていうのを言われて。
あれを言われて確かにやれるかもと思って少し希望になりましたね!

桝田さんからは、それこそうちの運行管理者とかと揉めた時に、そういうのはやっぱり誰でもあるっていうのをおっしゃってて。
揉めた時に、こなくそって自分でやるのか、もうちょっとうまく付き合って一緒に協力してやるのかみたいな、っていう話になったんですよ。
でも反感を持ってるってことは、逆にうまく付き合えれば良くなるはずだからみたいなことも言ってて。 ただそれをやるのは相当難しいみたいな話を聞いた時に、どこまでできるかわかんないですけど、確かにうちの番頭さんも僕より全然長いこと会社にいる方なんで。
やっぱそこも尊敬しつつ一緒に協力してやっていこうっていうのを思って。
最近結構関係がいい感じに。

あと桝田さんはお父さんが会社やられてたんで、僕もそれが一緒で。
お父さんから受け継いた時に、家族で会社の話をする時に言っちゃいけないことを言っちゃうっていう話になって。

言っちゃいけないことを言っちゃうんだけど、でもそれは家族だから言っちゃうのもあって。
やっぱり社員と社長だったら言わないんですけど、親子の関係だったら言っちゃうじゃないですか。
それはちょっと気をつけようと僕も思って。

それを聞いてから親父と意見とか言い合ってる時でも、それは違うだろうって思ったことでも言わないようにして。
ちょっと1回考えるようになって。
いきなり反論するんじゃなくて、ちょっと考えて、まず僕が間違ってるんじゃないか?っていうところから入るようになりましたね。

人がいれば何でもできる。採用・教育への取り組み。

──ホームページやSNSでは積極的に情報発信をしていますよね。

うちに入って思ったのが、運送会社って人がいれば何でもできるなっていうこと。
トラックもそうですけど、それこそドライバーの子たちがいっぱいいれば、労働時間も配分できて減らせますし、本当に色々できるなっていうのを入りたてすぐの時に思って。

父にお願いして求人とかを一緒にやらせてもらうようになって、ホームページのリニューアルとか、今まで20年ぐらい前に作ったホームページしかなかったんですけど、それを若い子たちが寄りつくような見やすいものに変えたり。
Googleマップの住所をちゃんと正しくしてGoogleで調べたら出てくるようにしたりとか、若い子が検索しやすくなるよう心がけて変えたりしましたね。

トラマネの会員さんのホームページとかって、すごい立派なんですよ。
ずっと言ってなかったんですけど、ホームページを新しくした時に、1番最初にこのホームページすごっ!て思ったのが第一名誠さんのホームページだったんです。
ホームページを見て、めちゃくちゃかっこいいと思って、運送会社であんなホームページを見たのが初めてだったんで。
こういうホームページを作ってみよう、ってトラマネに入らせてもらう前に思ってて。
ちょっと真似させてもらったりもしてました。

あとSNSの頻度とかもちょっとずつ増やしてって、仕事内容が分かるようにして。
始めた時は求人の数は増えたんですけれど、入社後のギャップがすごくて。
実際高い給料が確かにもらえるんですけれど、やっぱり手積みとかがあるんでそれを説明するんですけど、給料面しか見てなくて、実際働き始めると面接した時に話したことも覚えてないんですよね。
で「こんなん聞いてない」みたいなことを言われるんですけど。
3、4人ぐらいかな、せっかく入ってきてくれて教えて辞めるっていう人がパタパタパタっと続いちゃって。
そこから教育の方に力を入れたり、最初の時点でどういうことがありますよっていうの強調するようにとか、インスタだと手積みしてる動画をあげたりとか、トラック開けて中のものを見るとパレットが挟まってなかったりするんで、この車のこのぐらいの量は手積みするんだなとか見て分かるようにとか工夫してるんですけど、これでもまだちょっと入社後のギャップはありますね。

──社員用ジムの設置や、おにぎりの支給、面白い取り組みもたくさんされていますね。

米が高騰し始めたから去年の夏ぐらいから社長に相談してた時に、おにぎりを作はどうかっていう案が出たんですよ。
で、いいなそれってなって買いました、でっかいガス釜の給食に使うようなやつを(笑)
毎日15合ぐらい炊いて、ガス釜で炊いて、それでおにぎりに朝一並べるんです。

ジムもみんな使ってますね。
若い子たちはバンバン使ってて、 こういうのが欲しいああいうのが欲しいって言われるくらい。
ちょっと前はボートを漕ぐみたいな動作をするやつ‥なんていう名前なんでしょう?なんかよくわかんない機械を買いましたね。
そういう風にちょっとずつ増やしてって、結構立派になりました。

それこそ瀬尾さんのところみたいに、もう求人出さなくてもいいぐらいドライバーを抱えちゃいたいんで。
まだ今は、ドライバーが辞めたり入ったりが多いんで、ずっと続けてくれる人はずっと続けてくれてるんですけど、完全に定着したなって思うまでが長いんで、なかなか厳しいですね。

他社の“リアルな本音”が聞ける貴重な場。トラマネで得た学び。

──あらためて、炭竃さんにとってトラマネってどんな場所なんでしょう?

やっぱり他の会社さんの本音が聞ける場だなっていうのはすごい思ってて。
それこそ他の会社さんの悩みとか、それに対する実際の成功例だったり失敗例だったりとかは、同業種の業者さんにあんまり言わないと思うんですよ。
でもトラマネだとあの会社さんがこういうことで今まで悩んでてとかっていうのを赤裸々に話してくれますし、実際自分も悩んだ時にトラマネで相談させてもらいます。
僕は経験が浅いんでどう対処すればいいのかわかんないこととか。

それこそ先々月のトラマネでも相談させてもらったんですけど、ドライバーがトラブルを起こした時とか、どう対処すればいいかとかも、他の会社さんだったらどういう対策をするかって聞ける、っていうのが本当に大きいメリットだなと思って。
社内だけで聞いてると、やっぱりその企業の特色みたいなものしか出てこないと思うんですよ。
でそれについてこれない人はやっぱりどんどん辞めちゃいますし、結局変われないと思うんですね。
言い方が悪いですけど、それこそ今どんどん人数が減ってってる市場とか農協さんとか農家さんとかと同じだなっていうのを思ってて。
もっと時代に沿った会社づくりをしたいっていうのもあるんで、もっと色々取り組まれてる、実際に労働時間を減らして営業されてる会社さんの生の声を聞けるっていうのは本当に大きいメリットだなって思います。

──トラマネの取り組みのひとつ、模擬監査も大変ではありませんか?

めちゃくちゃ緊張します(笑)
僕もトラマネに入らせてもらった時にやったんですけれど、トラック協会とかの巡回指導より全然緊張しますね。
やっぱりトラック協会の方だと、実際にはトラックを運行する大変さとか分かってなかったりとか、ちょっと緩いところがあったりとかするんですけど、トラマネの模擬監査は皆さん守られてる会社なんで、「こここういう風にすればいいよね」とかを実際にできるから言うんで‥かなり緊張します。

実際の巡回指導だと乗り切って、ああ終わったなって、結局ずるずると元に戻っちゃうところがあると思うんですけど、トラマネだと他の会社さんも実際にそれを取り組まれてますし、それを継続してやられてるんで。
トラマネの模擬監査を受けてからは普通に仕事してても自社の悪いところが目につくようになるというか、ていうのが大きいですね。本当にいい取り組みです。

メディア掲載情報

物流Weekly

『丸幸運輸 社員専用のトレーニングジム、24時間利用可能』と題し、物流Weeklyさまに取材・掲載していただきました。