※この投稿は、トラック・マネジメント協会 公式YouTubeチャンネル「トラマネラジオ」の内容を記事化したものです。
トラマネラジオ第3回 貸切バス転落事故から学ぶ(前編)新規雇用ドライバーに対する安全管理の方法とは?
進 行:運送業専門コンサルタント 和田 康宏(以下、和田)
ゲスト:株式会社第一名誠 代表取締役 瀬尾 国大(以下、瀬尾)
和田)
第3回を始めたいと思います。
今日はですね、軽井沢のスキーツアーバスの事故の裁判がですね、2021年10月に始まりました。あの事故は、かなりですね、バス会社の事故ではあったんですけども、トラック運送会社にとっても学ぶべきことがたくさんある内容かな、と思いまして、今日は取り上げたいと思います。
あの事故はですね、先ほど言いましたように、2016年1月に起きた事故なんですけども、軽井沢の碓氷峠の下り坂ですね。速度がたしか96kmぐらいの状態で4mから6m下の崖というか(そういう地点)にバスが転落した、という事故ですね。ドライバー、1名運転してるドライバーさんと休憩で睡眠していた方の2名、あと13名の、主に大学生の方ですね、が亡くなるという、非常に大惨事の事故だったんですけども。
この裁判がですね、2021年の10月から始まりました。今回はこの裁判の何が焦点かっていうことなんですよね。普通ですね、バス会社にしろトラック会社にしろですね、大体ドライバーさんの事故というのは、「過労」で疲れていて居眠り運転をしていて事故をやるとか、あと、最近で言うと、ドライバーさんがやっぱりちょっと年齢が高齢化してきて、50代が多くて、運転中に心臓発作とか脳の病気とかで意識不明になって、すごい大きな事故になるっていうパターンが多いんですけども。この軽井沢のスキーツアーバスに関してはですね、そういった「過労」とか「健康状態」とかそういうものではなかった、というところもまたちょっとひとつ勉強になるところなんで、そこを見ていこうかな、と思っています。
裁判で争われているのはですね、要はドライバーさんがどうもですね、事故をやって亡くなったバスの運転手さんがですね、大型バスの免許は当然持ってたんですけども、5年ほどですね、もう大型バスを乗っていなかった、という状況の中で、たしか3回ですね、3回横乗りをした後に、4回目独り立ちした時に今回の事故が起きたということで。その社長と元運行管理者がですね、“そのくらいの“と言うと失礼な話なんですけども、亡くなられたバスのドライバーさんの技量がですね「この程度であればこういう事故が予見できたんじゃないか」というところが、今、刑事責任を追及される裁判になっている、ということですね。
実際、当然のことながら、みなさん占い師じゃないので、そんな「明らかにこのドライバーは事故をやるんだ」っていうのが分かっていれば、社長にしても運行管理者が点呼する時にでもですね、OKっていう風にはなかなか言わないはずなので。おそらくは「何となく自信はなさそうだけども、そんな大きな事故はやらないだろう」というところで、多分運行管理の人はですね、点呼でOKとしたのか。点呼をやっていたのかやっていないのかはわからないにしても「そこまではない、こんな事故は起こさないだろうと思っていた」ということで、初回の公判でもですね「予見できなかった」ということで、無罪を主張したという形になっていますね。
今後この検察側はですね、「予見できた」という非常に難しい立証をしていく作業を裁判の中で行っていくっていう話なので、どうやって立証するのかな?というのは、私個人としてもかなり、ある意味興味があるという、なかなか難しいのじゃないのかな、という風に思っています。だから、そういった中でも、今回の裁判っていうのはですね、トラック運送事業者さんにとっても、今後どのような安全に関する取り組みをした方がいいかっていう事を色々と教えられるところがあるのかなっていう風に私は思っています。
なので、その辺の話をですね、また今日も第一名誠の瀬尾社長とですね、お話しできればな、という風に思っています。
で、さっきの話に戻るんですけど。一番気になる点はですね、やはり亡くなったドライバー、バスの運転手さん自身が、最近5年間乗っていないと、大型バスに関して。だから「もうちょっと大型バスの運転を見習いしながら、慣れた状態で独り立ちしたい」という風に同僚のドライバーとか元運行管理者に対しても話していた、という、そういった事実が残っているわけなんですよね。だから、その辺のところをですね、やっぱりトラック運送会社についても、今、人材難で、他業種とかね、募集して(人を)入れたりすることがこれから増えてくると思うんで。その辺のところもやっぱりある意味勉強になるんじゃないかな、と思っています。
瀬尾さんにちょっとここでご質問したいんですけども。瀬尾さんのところではどうですかね。最近、トラックドライバーじゃない方、他業種も含めて、そういった方を入れた事っていうのはあるんですかね?
瀬尾)
はい。全く未経験の方を採用したことはあります。
和田)
はい。なるほど。全然あれですか?運送業じゃない方から、時々やっぱり(応募は)来ますか?
瀬尾)
来ますね。やっぱり毎年必ず数名は応募があります。
和田)
そうですか。そういった場合ってどうなんですか?ご存知のように、初任の新しいドライバーさんを入れた時に、20時間以上は横乗り、添乗指導をしなきゃいけないっていう風に法令で決まってますけども、実際どうなんしょうかね?教えて(みた時に)、普通にドライバーをやってきた人を入れた場合と違って、何かやっぱり違いとかっていうのはありますかね?
瀬尾)
まず未経験の場合にはですね、必ず実技の外部研修へ参加させるっていうところからスタートします。
和田)
なるほどなるほど。はい。
瀬尾)
で、社内に戻ってですね、ドライバーリーダー、最終的には管理者の添乗指導の元にですね、“自社基準レベルに達するまで”横乗り期間を延長させたりはしています。
和田)
は~、そうなんですか。その“自社基準”っていうのは、実際どんなものなんですか?
瀬尾)
実際この「添乗記録」っていうものは5年ほど前からやっておるんですけど。
和田)
はい。
瀬尾)
毎年毎年どんどん更新してですね。その時代、今ウチの仕事の内容に合ったものに更新して作り上げたものになっております。
和田)
あ~、じゃあ、あれですか?運転の技術のチェック項目も当然どんどん色々改正していきますし、仕事内容に合ったような何か(そういった)ものも入れていくわけですね?
瀬尾)
そうですね。当然ひとつのものじゃなく「どんな荷主さんの荷物を取り扱うか」にもよって、ちょっと内容が異なる場合もあるんですけど。
和田)
なるほど。
瀬尾)
それに合わせて作り変えてあります。
和田)
そうなんですね。実際どうなんでしょうね。『添乗指導20時間以上』っていう風には、法令ではなってるんですけども、その他の業種から来た方っていうのは、やっぱり普通の同業種から来た方よりも、時間っていうか期間ですかね、例えば、運転者上がりの人だったら1ヶ月でいいところが、他業種から来ると2か月かかる、とか。なんかそういうのはあるんですか?
瀬尾)
そうですね、当然個人差はすごく出ますけど。どうしても、こう、違う職種から来られた方や未経験の方っていうのは、1か月・・・以上はどうしてもかかってしまいますね。
和田)
あ~、そうなんですね。“横乗り”って、その、失礼ですが僕はちょっとあんまり分からないんですけども、同じ人が横乗りで指導するのか、違う人がやるのか、なんかこう決まりって、瀬尾さんのところはあるんですか?
瀬尾)
ウチは、今回採用したドライバーをこの荷主さんにあてがうというのか、行ってもらうと決めた時に、そこの仕事に携わっている、まず「そこに詳しいドライバー」が横乗りします。で、そこのグループの次は「ドライバーリーダー」が横乗りします。最終的には「トータル的な管理者」がOKを出すかという、3人は必ず横乗りしていますね。
和田)
そうするとあれですね。ちょっと指導者によって、若干なんていうかこだわっているところがあったり、何か違いが少しやっぱり出てきちゃうもんなんですかね?
瀬尾)
そうですね。やっぱり毎日やっている「本当のドライバー目線」っていうのは、どうしても「業務」の方に行きがちですし、「管理者目線」になってくると、どうしてもこう、「日々の運転」の方に集中してしまうのかな、っていうのはありますね。
和田)
おもしろいですね。やっぱり「荷主さんに迷惑をかけないように」っていう考える方と、「事故を起こした時に会社が色々問題になるの(を考えるの)」と、お互いの視点が違うから。多様性があって、ま、いいって言えばいいですけどね、逆に。
瀬尾)
そうですね。だから3人は必ず乗せるっていうところでは、いいのかなっていう風に思っています。
和田)
一番気になるのは、さっきの亡くなられたバスの運転手さんじゃないですけど、「なんか自信がない」とかっていう風にね、特に他業種から来た場合だと。
瀬尾)
ええ。
和田)
1ヶ月半普通の人よりも長く(添乗指導を)やってくれたとしても「何か不安だ」っていう風に言ってくるような新人のドライバーさんとかがいるんじゃないかな、と思うんですけども、その辺の不安の解消とかっていうのは、どういう風な形でフォローしているのかなっていうのを、ちょっとお聞かせ願いたいんですけどね。
瀬尾)
そうですね。あの、時にはですね、私自身もドライバー経験が長いものですから、自分で横乗りして、その不安箇所をですね実際自分で体験して、そこでアドバイスすることもあります。
和田)
う~ん、そうですね。でも、今後多分、どうですか?他業種の人も入れる機会は増えてくるでしょうし。実際、他業種のドライバーさんは、慣れてくると、どうですか?仕事をやっぱりやってくれますか?どうですか?
瀬尾)
そうですね。慣れてきたらですね、ほんとにミスなくやってくれる人が多いですね。
和田)
そうですか。なるほどなるほど。その辺の、そうですね、まずは、特に他業種から来た場合は、やっぱり実技がどこまで自信を持ってね、独り立ちさせられるかっていうのが、まず今回の軽井沢のスキーツアーバスから学べる一番ひとつ大事なところなのかなっていう感じはちょっとしますね。たしかにね。
瀬尾)
はい。
和田)
あと、もうひとつ。「20時間(の添乗指導)」とは別に「15時間の座学」っていうのがありますよね。知識を勉強する。
瀬尾)
はい。
和田)
あれはどんな形で教育されているんですか?
瀬尾)
え~、今はですね、なかなかこう、社内で15時間(の座学)をやるのは難しいものですから、『Eラーニング』を利用して、1項目ずつ(教育しています)。”確認テスト”までついているものですから、そういったものを利用して、(教育を)やって。肝心なところに関しては、管理者の方から・・・
和田)
はい。フォローする。
瀬尾)
はい。ええ。(そういった形で)教育しています。
和田)
はい。っていうことは、テストがあるから、ある程度覚えてないと次に進めないという形なんで、ある程度知識が自然とついてしまうような、そういう仕組みになっているという形・・・ですかね?
瀬尾)
そうですね、しっかり聞いてないとテストも合格できないですし
和田)
(笑)
瀬尾)
「恥ずかしい」ってみんな言うんですけどね。1回目何点だった、2回目何点だったっていうのが、全てこちらで分かる仕組みになっているものですから。
和田)
(笑)つらいですね、なるほど。
瀬尾)
この項目は3回目で合格した、とか、そういうのも全部分かるんで。ま、みなさん必死になってやっています。
和田)
(笑)なるほどね。わかりました。この軽井沢のスキーツアーバスに関してはですね、色々と学べる点があります。今回は、特に「新人のドライバーさんが入った時の15時間以上の座学と20時間以上の横乗り」について、今後どういう風に運送会社がしていったらいいか、という話をさせて頂きました。
次回はですね、この後編と致しまして、「ドライバーの適性診断」ですね、この「適性診断」についてどのようにこれから安全管理としてはね、やった方がいいかっていう話をしたいと思います。今日は瀬尾さんありがとうございました。
瀬尾)ありがとうございました。