※この投稿は、トラック・マネジメント協会 公式YouTubeチャンネル「トラマネラジオ」の内容を記事化したものです。
トラマネラジオ第13回 報告基準が変わった!事故報告書の改正内容
進 行:運送業専門コンサルタント 和田 康宏(以下、和田)
ゲスト:株式会社第一名誠 代表取締役 瀬尾 国大(以下、瀬尾)
和田)
「事故報告書の改正から学ぶ今後の安全管理のポイント・前編」ですね。この話をしたいと思います。
「重大事故を起こした時に、運輸局の方に、運送会社さんは30日以内に(事故について)報告しなければいけない」っていうルールになっているんですけども、その「報告すべき内容が追加された」っていう話、ですね。
なぜこの時期にそういう改正がされたのかっていう、その辺のことも踏まえてお話しをしたいと思います。
重大事故を起こした時に事故報告書を届出することは知っていると思うんですけど。
大変失礼な質問なんですけど、瀬尾さんの会社ではですね、過去この「自動車事故の報告書」っていうのは出したことはありますでしょうかね?
開業してから何年ぐらいでしたっけ?ちなみに、まず。今、運送業。
瀬尾)
今、24年ですね。
和田)
24年間ですね。
瀬尾)
はい。
和田)
どうですか?先代の時から、お父さんの時からっていう話なんですけど。
瀬尾)
たまたまなのか、一度も出したことはないです。
和田)
なるほど。だから、あんまり、当然書いたことがないっていう話・・・ですよね?
瀬尾)
そうですね、はい。
和田)
ご縁がなかったっていうことなので(笑)どんな報告書なのかっていうのも、あんまり細かくは知らないですよね?
瀬尾)
細かくは知らないですね。
和田)
なんかこういう様式であるんだろうなっていうのはね・・・
瀬尾)
見たことはありますけど・・・
和田)
見たことはありますよね?ああいう運管の研修会なんかでも見たりしますからね。
瀬尾)
そうですね。はい。
和田)
この「重大事故を起こした時に30日以内に(運輸局に)報告しないといけない」っていう風には、皆さんそれは分かっていると思うんですけど、じゃあその「重大事故」って何なんだっていう話があるじゃないですか?
この辺は瀬尾さん、どうですか?イメージでいいんですけど、法律の専門家ではないので、どんな時に出さなきゃいけないかっていうイメージですか?
瀬尾)
「通行止め」・・・っていうのが・・・
和田)
あっ、マニアックなところからきました(笑)!通行止め!
瀬尾)
(笑)頭の中にありましたね。
和田)
そうですね。「通行止め」っていうのは、「”高速道路”とか”(自動車)専用道”で」ですね、「3時間以上」ですね、ただ。「3時間以上通行止めになった」っていう時には(事故報告書を)出さないといけないっていうのは、これはマニアックな話なんですけど(笑)
瀬尾)
(笑)
和田)
いきなり変化球からきました(笑)通常は「死亡事故」、ですよね。
瀬尾)
ですよね。はい。
和田)
(事故により人が)亡くなったら、「やっぱりこれは出さないといけないわな」っていう話にはなってくると思うんですけど。
瀬尾)
はい。
和田)
もう一つは、それと並んで「重傷者」が出た時っていうのが定義としてあるんですけど。
この「重傷者」が意外と世間の常識と比べると難しいんですよね。
瀬尾)
はい。
和田)
どうですか?「重傷者」と聞いてどんなイメージですか?
瀬尾)
そうですね。「重傷」と聞けば、かなり重い・・・
和田)
なんか「意識不明」だとか、「集中治療室に入っている」とかっていうことですよね?
瀬尾)
ええ、そうですね。
和田)
大体イメージとしては。
瀬尾)
はい。
和田)
「そりゃ酷いことになっちゃったな」っていうので、経営者の方も(状況が)分かるんで、「これは何か運輸局に届出しないといけない事故なんだな」っていうのが分かると思うんですけど。
実際、ホントに不謹慎な言い方をすると、「一番軽い重傷者」っていうのは、「一日入院して30日以上通院しないといけない怪我を負った場合」っていうのも含まれるわけなんですよね。
瀬尾)
はい。
和田)
だから、これってじゃあ何が考えられるかっていうと、大体「骨折」「複雑骨折」ですかね。「ボルトを入れないといけないような複雑骨折」なんかがやっぱり該当するんですけど。たしかに「重傷事故」なんだけど、だいぶイメージが違いますよね?さっきの「意識不明」とかなんとかっていう話と比べると。
瀬尾)
そうですね。ええ。
和田)
だから、意外に運送事業者さんの観点からすると、「入院するか」「1日でも入院しちゃうかどうか」っていうところが「重大事故」になるかならないかっていう判断基準になってくるんで、意外にここがヒヤヒヤするところですね。
もし(入院に)なっちゃえば、運輸局の方に(事故)報告書を出さないといけない。
(事故報告書を)出せばどうなるかっていうと、大体想像つくと思うんですけど、「監査」におそらく入ってくる、と。「なぜこの事故が起きたんですか?」「安全管理体制」、”ドライバーの教育”やら”点呼”やら色んな”労働時間”やらっていうのがね、あと、「整備点検」ですか?そういったものがしっかり出来ているのかっていうのを当然見に来るのが運輸局さんの仕事なので。そういうこと(監査)になってくるんで、できれば、というか出したい人は一人も経営者の中ではいないんじゃないのかなっていう感じがしますけどね。
今回は、何が改正になったかというと、その中でもまた変化球なんですけど、「健康起因事故」ですね。
「健康起因事故を起こした時」もホントは「重大事故に当たる」。
これは、意外と意外じゃないですか?「健康起因事故」で、例えば、ドライバーさんが運転中に調子が悪くなって、運転が継続できなかった、救急車を呼んだりして。誰か他人に怪我をさせた訳でもないっていう、場合。
普通だったら、「運輸局に別に言わなくていいんじゃないか、本人がただ調子が悪くなっただけで、治療に行っただけだから、いいんじゃないか」と思うんですけど、これも立派な「重大事故」に“法律的には該当する”もんですから、これ(健康起因事故)が報告しなければならないのはこれまでも定まってはいたんですけど、この「定義」っていうか、「どういった事故まで」、「健康起因事故でもこういったところまで報告しなければいけないんですよ」っていう、ちょっと細かい、具体的な指示が出たっていう話なんですよね。
(その具体的な指示が)何かっていうと、それが「SAS=睡眠時無呼吸症候群」ですね。その、ここも問題なんですけど、「疑い」ですね、「『SASの疑いがある』居眠り運転とかによって事故を起こして、その後ドライバーさんが運転を継続することが出来なくなった」と。そういった場合に、「必ず30日以内に『重大事故』として(運輸局に)報告しなさいよ」という改正がこの2022年4月1日から始まった、という、そういう話なんですね。
この辺のポイントは「SASが診断されているドライバー」だけではなくて、国交省が出している『SASマニュアル』に記載された「SASの症状があるドライバー」も報告しなければならないっていうところが結構ポイントになってくるっていうことなんで。ここの辺がやはり国交省がかなり「SASに関する事故」っていうのを恐れているというか、今後増えるんじゃないか(と予想している)っていうね、そういったところが今回の法令改正で分かってくることなんですけど。
ちなみに瀬尾さんのところはどうですか?SASのドライバーさんとかいますかね?SAS検査をまずやってますか?
瀬尾)
ここ数年はやっていないんですけど、5年ほど前に(ドライバー)全員に(SAS検査を)受けさせました。
和田)
「全員」ですね。はい。なるほど。
瀬尾)
「全員」に受けさせました。はい。
和田)
どうですか?結果っていうのは、いかがですか?
瀬尾)
結果は、たしか4~5人が「再検査」となりました。
和田)
「再検査」はい。
瀬尾)
”D判定”っていうんですかね。
和田)
”D判定”ね。色々(検査)機関によっては”D”か”C”かは変わる場合がありますけどね。
「再検査が必要だ」と言われた、と。はい。
瀬尾)
はい。近くの病院にお願いして、また違った検査キットを貸し出ししてくれて、それを着けて再検査をしました。
和田)
再検査はどうでした?結果は。
瀬尾)
結果は「全員がSASではない」という結果になったんですけど。
和田)
はあ~、ある種“拍子抜け”のような感じの(笑)
瀬尾)
ええ。
和田)
「なんだ、誰も(SASは)関係なかったのか」ってね。
瀬尾)
よかったんですけどね。
和田)
よかったんでしょうけどね、結果的に言うと。
瀬尾)
ええ。それ以降ドライバーから苦情で「そんなのやる意味があるのか」っていう・・・
和田)
(笑)なるほどなるほど。
瀬尾)
そこから(SAS検査を)やらなくなってしまいましたね。
和田)
やっぱりドライバーさんは、「なんだよ脅かされたけど、行ったら違うじゃんかよ~」みたいな、そういう話ですか。
瀬尾)
ええ、そうですね。
和田)
「あんまり正確じゃないじゃないか」みたいな・・・話、ですかね。
瀬尾)
はい。
和田)
なるほど、若干その問題は、少しまだモヤモヤは社長の中にも残っているっていう感じですか?簡易検査に対しては。
瀬尾)
ええ、はい。
和田)
なるほど。(SASが)出なかったことがラッキーなだけであって、検査っていうのはそういうもんなんでしょうけどね(笑)、簡易検査なんて。
瀬尾)
そうですね。
和田)
“危ないよ”って言って“危なくなかった”ら、それは喜ばないといけないんだけど、「いやだから俺受けたくない」って言われると、なかなか簡易検査もできなくなっちゃう(笑)
瀬尾)
そうなんですよ、(簡易検査)やりにくくなってしまいます。
和田)
(簡易検査が)やりにくくなっちゃうんでね(苦笑)、ドライバーさんもその辺のところはご理解頂けると非常に助かるには助かるんでしょうけど。
瀬尾)
はい。
和田)
今後の展望はどうですか?SASの検査に関しては。いかがですか?
瀬尾)
そうですね。やっぱりこうやって(SASによる健康起因事故も)運輸局の方に報告義務があるっていう話をもう一度ドライバーにして、今年(2022年)に関しては、全員ではなく、健康診断の結果か何かを元に、数名をピックアップして(SAS検査を)受けさせたいな、という風に考えています。
和田)
それはいいかもしれないですね。全員でやるよりも、健康診断の、例えば「血圧が高い」とか多分色々あると思うんですけど、その辺でピックアップするのはいいかな(と思います)。さっきの『SASマニュアル』でも、一番簡単に言われているのは、BMIっていう、肥満度のあれですね。
「体重÷身長÷身長」。体重は、単位はトンじゃなくてキログラムで(笑)。
瀬尾)
(笑)
和田)
身長はメートルですね。163(センチ)だったら1.63っていう形で(計算を)やるんで。
僕の場合だと大体(体重が)59キロなんで、59÷1.63÷1.63でやっていくと、22~23ぐらいになるんですけど。
瀬尾)
ええ。
和田)
それが、「30以上」の人は完全に8割方「SASの疑いが高い」っていう風に言われてるんで。滅多にいないんですけど、長距離やられてる方だと食生活が乱れて、結構(体格が)大きい感じの方だと30いってる方いますね。
どう?いますか?第一名誠さんって。
瀬尾)
ええ。中にはいますんで。
和田)
ちょっと大きい感じで・・・BMI値が30以上の方・・・
瀬尾)
ここ最近、周辺で若干ブームなのか、やたらと筋トレをする子が多くなってきて・・・。
和田)
(笑)筋トレブームですか!
瀬尾)
ジムもいっぱい行ったりとか。
和田)
なるほど。いわゆる筋肉質なんですね。
瀬尾)
そうすると、自然に引っかかっちゃうんですよね、健康診断で。筋肉が重たいんで。
和田)
そうなんです。お相撲さんもそうですし、筋力のある人はやっぱりすごい重いんで、BMIではちょっと(判断が)微妙になってくる場合はあるんで、難しいですよね、たしかに。
瀬尾)
そうなんですよね。難しいですよね。
和田)
そういうのをやっていない人だったら大体合ってくるかなっていう・・筋トレやってるとちょっと・・・
瀬尾)
ええ、そうですよね。もうちょっと会社で判断しながら・・・
和田)
そうですね。
瀬尾)
数字だけじゃなく・・・
和田)
そうですね。それ(BMI)も一つの判断だけど、それだけじゃなくて、「本人が筋肉質がどうか」も見ていかないとやっぱり(判断が)微妙かもしれないんでね、その辺の所は(考慮する必要が)あるかなっていう感じはしますけどもね。
瀬尾)
はい。
和田)
あとは「大きないびきをかく」とかの(SASの)自己チェックしてもらって。
大体「大きないびきをかく」か「睡眠中に呼吸が苦しそう」、「息が止まっていると指摘される」とかね。
瀬尾)
はい。
和田)
あと「息が苦しくて目が覚める」「朝起きた時に頭が痛い」とか「頭重感・頭が重い感じがする」とか、「昼間に強い眠気がある」。この辺が1個か2個あるとちょっと(SASが)怪しいかなっていうことになってくるんで、その辺も見ながら色々判断していくといいかなっていう感じがしますけどね。
瀬尾)
はい。
和田)
ぜひ今度またそれぐらい(SAS検査を)やって頂いて、どんな感じになるかっていうのを、5年ぶりですけどね。ドライバーさんも年齢がいってますから、多分ひょっとしたら引っかかるようなことになってきているかもしれませんけどね。
瀬尾)
そうですね。
和田)
その辺もやって頂ければいいかなって思います。
今日は、2022年4月1日の事故報告書(の改正)で、報告しなければならない事故(の中)で、「SASの疑いがあるような追突事故、そういう事故で運転が継続できなかった場合っていうのが、運輸局の方に報告しなければいけなくなった」っていうことで、今後「SASに関する検査」、あと、「その後の(SASに)なった場合のフォローアップ」っていうのが運送会社にとってはすごく重要な健康管理の取組みになるんじゃないのかなっていう話をさせて頂きました。
今日は瀬尾さん、ありがとうございました。
瀬尾)
ありがとうございました。