※この投稿は、トラック・マネジメント協会 公式YouTubeチャンネル「トラマネラジオ」の内容を記事化したものです。
トラマネラジオ第23回 働きやすい職場認証制度の取得 ドライバーの安心安全を考える
進 行:運送業専門コンサルタント 和田 康宏(以下、和田)
ゲスト:株式会社第一名誠 代表取締役 瀬尾 国大(以下、瀬尾)
和田)
今回はですね、「ドライバーさんの運送会社に求める安心・安全とは何か」。この点について、株式会社第一名誠 瀬尾社長とお話をしたいと思います。
瀬尾さんよろしくお願いします。
瀬尾)
よろしくお願いします。
和田)
冒頭こういう話をしたのはなぜか?と言いますと、今年2023年は「働きやすい(職場)認証制度」っていうのが2年目で、「更新」の時期だっていうことで、ちょうど今、「『一つ星』をそのまま維持して更新する」のか、今年初めて出来た、「さらに働きやすい職場を作るための基準を上げた『二つ星』というのを取るか」っていう形で、3/7まで(更新申請)受付があったんですけども。この中で、「ドライバーの安心・安全の取り組みをしていますか?」という評価基準があるものですから、そこを色々拡大してお話していければな、という風に思うんですけども。
瀬尾さんの会社は今年更新ですよね?
瀬尾)
そうですね。はい。
和田)
で、どうなんですか?「一つ星」「二つ星」の選択は、どちらで選ばれるんですかね?
瀬尾)
「二つ星」で申請しました。
和田)
なるほどなるほど。それは、どうですか?社長としてはどんなお考えで選ばれたんですか?わざわざ。
まだ、失礼な話ですけど、「二つ星」を選んだところでそんなにメリットは直接はないとは思うんですけども。
“なぜ選ばれたか”っていう所をお聞きしたいんですけど。
瀬尾)
何かメリットを求めるわけではなく、やっぱり一つでも“より良い会社”だという風に他の方から思って頂けるように、二つ星を選びました。
和田)
やっぱりどうですかね?こういう認証基準を取ると、「周りの目」というか、“一番の目”は「ドライバーの目」だと思うんですけども、やはりしっかりしないと“見掛け倒しだ”という風にドライバーさんから言われたりするのも、ある意味癪でしょうし(笑)
瀬尾)
そうですね。
和田)
その辺はありますか?ちょっと(社内体制に対する意識を)盛り上げようという気には、(モチベーションの)維持は出来るツールにはなるんですかね?そういう意味では。
瀬尾)
そうですね。今は、ドライバーのみんなも「どうしたらこの制度が取得できるのか」「どういった項目が一つ星、二つ星にあるのか」っていうのが、多分興味を持って調べてっていうドライバーも中にはいるもんですから。
和田)
あっ、(「働きやすい職場認証制度」の詳細を)見てるんですか?
瀬尾)
(詳細を)見てますね。はい。
和田)
あっ、それは、世代で言うと、どのくらい?バラバラですか?どうなんですか?
瀬尾)
30代、40代、ですね。
和田)
へえ~、なんでそこまで熱心に見てるんですかね(笑)ちょっと僕が聞きたいんですけど(笑)
瀬尾)
う~ん、まずは、「このステッカーはなんだ?」っていう所からだと思うんですけど。
和田)
あっ、そうか~、は~は~・・・
瀬尾)
「自分のトラックに貼られてるやつは」
和田)
は~は~・・・それで気になる人は気になる訳ですね?
瀬尾)
気になっちゃう。「『働きやすい職場』ってどんななんだ?」っていうところから検索して、みんな(関連サイトに)入っていくみたいなんですけどね。
和田)
あ~、そういうことですね。じゃあ、だいぶドライバーさんも変わってきましたね。昔のドライバーさんは検索もしないですよね(笑)
瀬尾)
そうですね。今は特に簡単に(スマホ等で)そういうのが見れてしまう(時代)っていうのがありますけど。
和田)
なるほどなるほど。面白いぞ。それは初めて聞きました。「ドライバーさんが『働きやすい認証制度でどういうのがあるのか』っていうのを調べる」って、あんまり聞いたことがなかったので、ちょっと意外でしたけど。
瀬尾)
はい。
和田)
その中でどうですか?だいぶ「一つ星」と比べますと、(「二つ星」は)クリアしなければいけない項目って言うんですかね、結構たくさんありますよね?案外。
瀬尾)
ありましたね。
和田)
だいぶ違いますよね?「一つ星」と「二つ星」では。
瀬尾)
違います!はい。
和田)
ね?「働きやすい(職場)認証(制度)」をご存じない方だと、いきなり中身の説明をたくさんしてもいけないんですけど。
「A・B・C・D・E」で基本的な評価項目が5つあるんですよね?たしか。
瀬尾)
はい。
和田)
それに“二つ星のため”の「F」っていう基準が、今回新しく出来たと思うんですけど。
瀬尾)
はい。
和田)
どうですか?この中で、手こずられたっていうのは、どの辺の内容になるんですか?
瀬尾)
「D」の「安心・安定」の部分が、非常に苦労しました。
和田)
なるほど。ちょっと見てみましょうかね。知らない方もいらっしゃるんで。そんなに項目数はないんですけども。
まず一つ目が「安心・安定のための先進的な取組みをしているか」っていうことで、「労災の上積みの保険に入っているかどうか」っていうのがありますね?
瀬尾)
はい。
和田)
この辺は瀬尾さんの所は入ってらっしゃるんですか?
瀬尾)
ええ、ここは入っています。
和田)
なるほど。これはなんか「2点」って書いてあるんで、2点もらえるんですかね?
瀬尾)
「2点」、はい。
和田)
その次の「病気・ケガで働けない場合の“所得”を補償する保険」ですよね。
瀬尾)
はい。
和田)
「入院」とかではなくって、「収入を補償する保険」っていう。これはなかなか、私もお客さんで入っているっていうのをほぼ聞いたことがないんですけどね・・・
瀬尾)
ええ、そうですね。ウチもここはちょっと入ってないです。
和田)
なかなかなもんですよね・・・
瀬尾)
はい。
和田)
負担もそうですけど。
瀬尾)
う~ん。
和田)
う~ん。だからここはほとんど(の会社が)私も(点数を)取れてない(と思います)。中小企業さんであれば、多分(加入して)ないんじゃないかなっていう形で。
その次の「退職金制度」はどうですか?「中退共(=中小企業退職金共済)」も含めての制度なんですけど。この辺は?
瀬尾)
数年前までは(退職金制度に)入っていたんですけど。
和田)
なるほど。
瀬尾)
だから、ベテランドライバーにはまだ(掛け金を)掛けているんですけど、それ以降(入社)のドライバーに関しては、もう(退職金制度加入を)やめてしまったものですから・・・
和田)
なるほど。
瀬尾)
これはちょっと該当しない状況です、今。
和田)
一時あれでしたもんね?「退職金制度」っていうのは、終身雇用ではなくなってきちゃって、運送業界でも、昔から長く(会社に)入っている人は、(退職金制度に)入っているからずっと(加入を)続けるんだけども、これから(会社に)入ってくる人は、それ(退職金)を求めないっていう時代がしばらく続きましたからね。
瀬尾)
そうですね。
和田)
「とにかくそういうのはどうでもいいんだ」と。「給料が毎月高ければいいんだ」っていう話になってきて。運送経営者の方も、特に中小企業さんだと、「じゃあ毎月給料を高くしてあげた方が喜ぶんであればそうしようか」っていう話でね。「退職金制度」も一時パワーがなくなっちゃったっていう所がありましたんで。
瀬尾)
はい。
和田)
この辺の所もまた考えなければいけないのかなって。でもまたこういう項目があると、社長もどうなんですか?「ちょっと(退職金制度について)色々また考え直そうかな」っていうきっかけにはなりますよね?多分。
瀬尾)
そうですね。ここはもう早速、保険会社さんの方に問い合わせて、今説明を聞いている段階です。
和田)
これもドライバーさんの世代が変わってくると、「今の給料よりも、長く(会社を)辞めた後も何か補償されるのか」っていうところを気にされるドライバーが増えてこれば、そう経営者は(対応)していかなければいけないですよね。
瀬尾)
そうですね、はい。
和田)
時代が変わってくると、この辺は柔軟に(対応して)いかないといけないのかなっていう感じがします。
あと「定年延長」。「再雇用の人は、65歳を超えても働けますか?」という話になっていますけど、この辺は?
瀬尾)
はい。(定年延長制度は)あります。大丈夫です。
和田)
どこまでいけるんですか?65歳まではいけるんですか?
瀬尾)
いけます、はい。
和田)
超えた後はどんな制度なんですか?
瀬尾)
超えた後も、条件を満たせば、「1年契約」で・・・
和田)
「1年」で。
瀬尾)
ええ。「ドライバー」として雇用をしています。
和田)
なるほどなるほど。これはMAXはないんですか?80(歳)とか(笑)?
瀬尾)
ええ、MAX 70(歳)です。はい。
和田)
(笑)70(際)でも元気だったらどうします?また考える?その時(笑)考えなきゃいけないですか(笑)?
瀬尾)
今現在は「点呼」の方に回ってもらったりっていう風にしています。
和田)
あ~、「点呼者」に回すんですか、今は。
瀬尾)
はい、そうです。
和田)
だからその時でまた、時代が変われば、少しずつ(対応を)考えなければいけないのかもしれないですね。
瀬尾)
そうですね。
和田)
ここOK。
あとは「採用から正社員にするまでの間に1年以内になるようになっていますか?」と。「就業規則」だと思うんですけど。これは大丈夫ですよね?
瀬尾)
はい、大丈夫です。
和田)
これはどれくらいで正社員にするんですか?最長で、一番長くかかって・・・
瀬尾)
6ヶ月です。
和田)
6ヶ月。は~、なるほど。
瀬尾)
はい。
和田)
じゃあ、6ヶ月で正社員になるか、(正社員になるための基準に)合わなければ、それはまた考えるかっていう話ですね?
瀬尾)
そうです。
和田)
OKです。
ここまでが具体的に評価基準が書いてある項目で、5つあったんですけど、それぞれ2点ずつですよね?
瀬尾)
はい。
和田)
(第一)名誠さんとしては、8点取らなきゃいけないんで、一つ以外はクリアしていないといけなかったんだけど、ちょっと「所得補償」の部分と「中退共(中小企業退職金共済)がまだ全員(加入)じゃない」っていう部分で(クリアできなかったので)、6点しか取れなかったっていう形ですよね?
瀬尾)
そうですね。
和田)
そこで、最後6番目にあるのが、「これ以外に似たような『ドライバーの安心・安定になるようなもの』をやっているかどうか」っていう所で、ここで(加点に)チャレンジした訳ですね?今回。
瀬尾)
はい。
和田)
具体的にどんな取り組みで、これは出されたんですか?「自由記述欄」の所ですよね?
瀬尾)
「永年勤続表彰」と。
和田)
「永年勤続表彰」、はい。
瀬尾)
もう一個は、「事故のない快適な社会を作る」っていう所で、「事故の防止の取り組みを社内で宣言していく」っていうことですね。
和田)
なるほどなるほど。当初社長から聞いた時は、もうちょっと違うアイデアっていうかありましたよね?あれ何でしたっけ?
瀬尾)
そうですね。「『インフレ手当一時金』を支給しよう」という取り組みですね。はい。
和田)
なるほど。それはすごい、さっきのすみません(苦笑)。「永年(勤続)表彰」とかよりもはるかにドライバーが喜ぶような気がするんですけど(笑)。
瀬尾)
一時的には喜ぶんですけど、やっぱり「一時金」っていうことで、毎年あるものではないじゃないですか・・・
和田)
そうですね。どこまでの基準かって決めるんでしょうけどね。「物価高」とかでね?
瀬尾)
ええ、そうですね。
和田)
そうですね、たしか社長に聞いて確認したんですけど、審査機関に。やっぱり「安定性がない」っていうことで、「あんまり点数にならない可能性が高い」っていう話が出て、ガックリしたんですけど、もうあれはやるのをやめたんですか?
瀬尾)
いや、やめてないです。
和田)
やめてないんですか!
瀬尾)
はい。
和田)
今年はやるっていう感じなんですか?
瀬尾)
はい。2023年3月に支給する・・・
和田)
おお~!
瀬尾)
ところです、はい。
和田)
具体的な金額はここであんまり発表しない方がいいかもしれないんで(笑)あれなんですけど、でも、ドライバーさんは多分盛り上がっちゃうかもしれないですね。
瀬尾)
ええ。(きっと盛り上がる)と思ってですね、安全会議の時にそれを発表したんですけど、とりあえず大半が「頭ポカーン」と・・・
和田)
(笑)
瀬尾)
「なんだ?『インフレ手当』って・・・」
和田)
バカヤロウ(笑)みたいな(笑)
瀬尾)
っていう感じだったので、「みんな帰ったら早速得意のスマホで調べてくれ」っていうことを、言いましたけど。
和田)
「インフレ」っていう言葉は聞き慣れているようで、分かったような分からないような言葉なんで、「それの手当って何なんだ?」っていう話で。
瀬尾)
そうですね、はい。
和田)
じゃあ、(言葉について)調べたドライバーさんからは、後日反応があったんですか?「(インフレ手当って)そういうものなんだ!」って。どうですか?
瀬尾)
いや、特に何もないですね(笑)
和田)
(笑)やっぱり言葉はもうちょっと易しくする必要があったかもしれないですね(笑)
瀬尾)
はい、そうですね。
和田)
僕のお客さんでも、物価高で通勤のガソリン代とかですか?上がった部分の差額ですか?支給するっていう所は、あるにはありますけど、ほんの数社ですからね、愛知県でも。中小企業に限って言えばですよ?
瀬尾)
はい。
和田)
だから、失礼ながら、第一名誠さんはそんな100台ある規模(の会社)ではないので、やること自体が画期的なことではあるんですけどね、はっきり言って(苦笑)。
瀬尾)
そうですね。
和田)
ドライバーさんが(インフレ手当を)もらった後で(どれだけすごい待遇なのか)分かってくれればいいんですけどね。
瀬尾)
そうですね。渡す時にもう一度説明したいですね。
和田)
(笑)「いかに滅多にないものなのか」っていう所がね、分かっていただけると(いいですね)。せっかくだから、それを(社員のみなさんに)分かってもらいたいな~っていう感じがしますけどね。
瀬尾)
そうですね。
和田)
どちらにしても、今回の「働きやすい(職場)認証(制度)」っていうのは、たしかに今の段階では、取得しても、例え「二つ星」であっても、そんなに経営者が喜ぶような金銭的なメリットだとか、仕事を取る上で大きなメリットがあるっていう感じには見られないですけど、ただ、そうやって「ドライバーの方が少し認証基準というものを気にするようになった」ということを考えると、こうやって(多くの事業者さんが)どんどん「二つ星」に(更新)していったり、場合によると、来年2024年に「三つ星」制度が出来るかもしれないですけど、やはり(働きやすい職場認証を)取っていくと「(自分の会社の)社長、経営者の考え方っていうのはそっちに向いているんだな」っていうのが(社員に)伝わっていくのかもしれないですね。どっちかっていうとね。
瀬尾)
そうですね。
和田)
「ちょっとあの(認証)マークだけは、もう少しかっこよくしてほしい」っていうのは・・・
瀬尾)
(笑)
和田)
僕が別に全然力がないので、そんなこと言えないですけども。
またそれ(デザイン)も見直されて、(認証取得事業者が)ステッカーもトラックに貼ってくれるようになると、もっと(働きやすい職場認証制度の)周知が進むんでしょうけど。
瀬尾)
はい。
和田)
「あれだけは貼りたくない」っていう懇願してくるドライバーが、僕のお客さんでも多くてですね
瀬尾)
ああ、そうなんですね?
和田)
「頼むから貼りたくない!」っていう話で(笑)
瀬尾)
へえ~
和田)
なんか“かっこ悪い”っていう意識の所が、やっぱり多いんですけど。
ただ、制度自体の考え方としては悪くないですからね。
「健康管理」をやっていくっていう事はですね、非常にいい取り組みだし。今、平均年齢50歳のドライバーさんが60歳、もしくは65(歳)以上働いていく上では、早めにそういう「健康管理」をやっててもらったらね、運送会社もドライバーさんもお互いにハッピーでいけるんじゃないかなっていう感じはするんで。
第一名誠さんのこれからのその「安心・安全の取り組み」が、また更に進化してくのかっていうのは興味がありますので、ぜひ社長には来年はまた「こういうことやったよ」っていう話を聞かせて頂ければありがたいなという風に思います。
今日は「働きやすい(職場)認証(制度)」の中の(認証基準のひとつである)「安心・安定の先進的な取り組み」っていうことで、お話頂きました。
瀬尾さん、ありがとうございました。
瀬尾)
ありがとうございました。