※この投稿は、トラック・マネジメント協会 公式YouTubeチャンネル「トラマネラジオ」の内容を記事化したものです。
トラマネラジオ第14回「事故報告書改正を受けて 日ごろの取組み 今後の健康管理」
進 行:運送業専門コンサルタント 和田 康宏(以下、和田)
ゲスト:株式会社第一名誠 代表取締役 瀬尾 国大(以下、瀬尾)
和田)
「事故報告書の改正から学ぶ今後の安全管理のポイント・後編」です。
前回は、「2022年4月からSAS(=睡眠時無呼吸症候群)の疑いのある健康起因事故を報告しなければならなくなった」っていう話をしました。そして、なぜそんな法令改正がされたのかなっていうのを考えてみると、今後、運輸局がSASに関して規制する可能性が何年か後にはあるんじゃないかっていうことも透けて見えるんじゃないかっていう話をさせて頂きました。
今回は、健康起因事故を起こして30日以内に事故報告書を運輸局に届出しなければならなくなった際に、じゃあ一体「どんな内容を健康起因事故を起こした時に報告しなければならないのか」っていう話ですね。それと、「報告するべき内容から逆算して、運送会社の今後の健康管理のあり方」っていうのも探っていければいいかな、と思います。
瀬尾さん、今日もよろしくお願いします。
瀬尾)
お願い致します。
和田)
まず「事故報告書」なんですけど。
通常、健康起因事故ではない報告の場合はですね、1枚の紙なんですね、表と裏、「事故報告書」っていうのは(両面に)書く欄がありまして。「事故発生日時」から、「どんな事故なのか」「加害者はどういう風なのか」って、そういう報告書を書いて。あと「(事故)原因」と「再発防止策」みたいなのを書いてですね。裏側はもうちょっと細かいですね。「ドライバーが事故に気付いたのは何メートル前に分かったのか」とかですね。「そのドライバーは最新でいつ運転適性診断を受けたんですか」とか。「直近の健康診断はいつ受けたんですか」とかね。「直近で違反はあるんですか」って。安全管理をやってないと書けない内容ですね、事故までにね。
瀬尾)
う~ん。
和田)
そういったところも、普通の事故報告書で言うと「裏面(りめん)・裏のページ」が結構重要なんですよね。表は当然書けるんですけど、裏がなかなか普段から安全管理をしっかりやっていないと書けない項目が出てきたりとかするんで、そこが結構ポイントにはなってくるんですけど。
今回のこの「健康起因事故を起こした時」は、それプラスα、『別表の2』っていうやつを出さないといけないんです。「ドライバーの健康状態に起因する事故の調査事項」っていう『別表の2』っていう紙があるんですけど、その紙の内容を見ていくと、「なるほど、健康起因事故を起こすとこういうことを報告しないといけないのか」と分かりますんで。裏を返せば、やっぱり普段からそういう健康管理をやっていかないといけないんだなっていうことが分かるもんですから、その内容をひとつずつ見ていこうかな、という風に思います。
まず最初は、SASの事例でいけばですよ、今回、健康起因事故だと他の病気、「脳の病気」とか「心臓の病気」もありますけど、例えば「SAS」が原因で事故を起こして報告をしなければならなくなった時に、当の本人、「SASの症状が出て事故を起こしちゃったドライバー」について、まず報告しなければなりません。(それは)何かっていうと、まずそのドライバーが、当たり前ですけど、「健康診断を受けているかどうか」っていう話ですね。
これは普通の会社さん、きちっとした運送会社さんであれば受けているところなんですよ。ただ、それが例の"1年に1回"だけなのか、「深夜労働・深夜早朝、要は夜の10時から朝の5時までに係る仕事を月4回、6ヶ月平均で月4回以上そういう仕事」をやっていれば、“6ヶ月に1回の健康診断”も受けないといけないんですが、その辺も含めて「法令で受けなきゃいけない健康診断をちゃんと受けていますか?」という、そういう(内容を)書く欄がまず一つあります。これは多分、第一名誠さん、瀬尾さんのところは大丈夫だと思うんで、敢えて今も聞きませんけど。
次ですね。その次の2個目に書く欄があって、「精密検査」、要はこの場合は「健康診断で精密検査が必要だと言われた人」に対して「受診状況」という(記入)欄があるんですよね。
この辺は、瀬尾さんどうですか?「高血圧」だとか「脂質異常」だとか、色々「異常あり」っていう(ように)健康診断で書かれるドライバーさんもいるかと思いますけど。瀬尾さんの会社では、どうですか?その辺は、まず、そういう症状のある人はいますよね(笑)?いくらなんでも、平均年齢が若いから少ないとは思いますけど。どうですか?
瀬尾)
はい。数名います。なので、必ず(健康診断の)結果が出て1か月以内に・・・
和田)
1ヶ月以内!
瀬尾)
ええ。担当の先生に向けて書類を持たせてですね、(受診確認の)印鑑をもらって帰ってくるように(と指示しています)。
和田)
その辺はどうですか?最初からすんなり出来ました?結構嫌がられたんじゃ(笑)
瀬尾)
最初は嫌がられます。はい。
和田)
なんて言いますかね?「ええ~、そんなこと言うんですか?」みたいな感じ・・・
瀬尾)
「これ(この結果)で行かないといけないんですか?」「なんともないんですけど」とか。ええ。
和田)
ま~「なんともないんですけど」っていうのは、誰でもそう思ってるっていう話ですよね(笑)。
瀬尾)
ええ。
和田)
それで、運転中に急に意識を失うっていうことなんでね。それは(再診に行かない理由はそれぞれ)あるんでしょうけど。でも、今はドライバーさんみんな、協力して頂けるっていうこと・・・ですか?
瀬尾)
そうですね。今は問題なく(再診に)行ってくれています。
和田)
「俺のポリシーで、俺は行かない!」っていう、昔の人だとそういうことを言いそうな気がしますけど(笑)。
瀬尾)
ええ(笑)、昔はそんな感じの人もいましたけど、今はもう大丈夫。
和田)
(笑)そうですか。
瀬尾)
はい(笑)
和田)
瀬尾さんの(会社の)ある名古屋市港区だと、そういう職人みたいな感じで、なかなか言う事を聞いてくれない人が多そうな気がするんですけど、今は大丈夫だということですね(笑)。
瀬尾)
今は大丈夫です、はい。
和田)
後は、次、そういった人が通院している場合。「加療」要は「治療の状況」っていうのをちゃんと会社が「通院しているのかどうか」とか、そういうのを把握しているかって書く欄もありますが、この辺はどうですか?何か把握しているんですか?
瀬尾)
そうですね。「通院している人」はほとんど「血圧の薬をもらいに行く人」なんですけど。
和田)
なるほどなるほど。
瀬尾)
大体、血圧の薬って一か月分ぐらい出してもらえる・・・
和田)
そうですね、1ヶ月だと思います、今は。
瀬尾)
(病院に)行った時の(受け取った)処方箋を会社に提出してもらってるんで、最後に(病院に)いつ行ったかっていうところを確認して(対象のドライバーに)声掛けして。
和田)
なるほどなるほど。
瀬尾)
「次(病院に)いつ行きますか?」っていう風に今はやっています。
和田)
(処方箋の)提出は会社側から言わなくても本人から出してくるんですか、今は。どうなんですか?
瀬尾)
今はもう(自分から)出してくるようになりました。
和田)
あっ、すごい!そうですか!
瀬尾)
ええ。
和田)
それはすごい教育ですね(笑)普通なかなか(会社側から)言っても持ってこない(ので本人に確認する)と「失くした」とか言われたりするんですけど。出してくれますか。
瀬尾)
そうですね。もう今は出してくれるようになりました。
和田)
それはだいぶん助かりますね、逆に言うとね。
瀬尾)
ええ。
和田)
逆にどうですか?さっき、医師の意見書ももらってるっていう話なんですけど、なんか先生が条件を付けてきている人はいますか?「通院しろ」ぐらいですか?「薬の飲み合わせ」ぐらいしか条件は付かないですか?
瀬尾)
そうですね。それと、あとやっぱり、「毎日(血圧の)測定をしなさい」っていう。
和田)
なるほどなるほど。ふ~ん。
瀬尾)
ええ。
和田)
それはどうなんですか?会社では敢えて(測定した血圧が)いくつだったかっていうのは、家で測ってきたのを聞くとか、それとも会社でもう一回測らせるとか、何かあるんですか?どうなんですか?
瀬尾)
会社で必ず測らせて・・・
和田)
測らせますか。
瀬尾)
はい。(測定器が)紙が出てくるタイプなんですけど。
和田)
レシートみたいなものが出てくる・・・
瀬尾)
レシートみたいなものが出てきます。
和田)
なるほどなるほど。
瀬尾)
(ドライバーが結果の紙を)提出して、点呼者が裏に(ドライバーの)名前を書いて、後で管理者が(結果を)全部エクセルに落としていきます。
和田)
で、1ヶ月の大体(データが)出てくるわけですね?
瀬尾)
そうですそうです。1ヶ月平均とか・・・
和田)
あまり酷ければ、「ちょっとこれ大丈夫?」っていう感じ・・・
瀬尾)
そうですそうです。「先生に相談して薬を変えてもらった方がいいんじゃないか」っていうのはやったことありますけど。
和田)
ちなみにその血圧(測定)をやっているのは(薬を)飲んでいる人だけ?それとも普通の人も?どの辺のやり方なんですか?血圧を測るドライバーさんっていうのは。
瀬尾)
(薬を)飲んでいる人だけです。
和田)
(飲んでいる人だけ)はやっているわけですね。飲んでいない人でも測りたい人もいますか?やっぱり。
瀬尾)
測りたい人は・・・
和田)
「健康オタク」みたいな(笑)
瀬尾)
そういう人は自由に測れるようにしています。
和田)
どんな血圧計なんですか?色々あるじゃないですか。医療器具から普通のなんちゃっての血圧計まで色々あると思うんですけど。
瀬尾)
もう医療器具です。
和田)
病院に置いてあるような、しっかり(とした)。
瀬尾)
そうですそうです。
和田)
巻くやつですか?ぐるっと。腕を入れてやるやつですか?
瀬尾)
腕入れて、自分でボタンを押して、はい。レシートがピリピリっと出てくる・・・
和田)
じゃあ、座ってしっかりした状態で(測定を)やれば、多分それなりの正確なデータが出る感じですか?
瀬尾)
そうですね、はい。
和田)
それ(毎日の血圧測定)を血圧の薬を飲んでる人がやってるってことなんで、かなり(対策を)やってらっしゃるんじゃないかなっていう感じがしますけどね。そういったところを書く欄が(事故報告書には)ありますよ~っていうことで。
じゃあ敢えてあれですか?まだ労働時間を極端にその人だけ短くするとか、手積みとかをそういう作業を軽減させるとか、そこまではまだ先生の意見でも出てないから、まだそこまで(勤務上の配慮を)やるレベルではないっていう感じですか?
瀬尾)
そうですね。「深夜早朝勤務はできるだけ避けるように」っていう事は・・・ある程度・・・
和田)
言われてる。
瀬尾)
ええ、(そう言われる)先生はいるんですけど。比較的そういった今、仕事が・・・ないものですから・・・
和田)
ないですよね。
瀬尾)
はい。
和田)
確かないですよね、(午前)5時前(に開始する仕事)もほとんどない・・・ですかね?
瀬尾)
ないです。
和田)
(午後)10時以降(までかかる仕事)もほとんどないですもんね。
瀬尾)
ないです。はい。
和田)
逆にそれで(条件を)クリアしているっていう感じ・・・
瀬尾)
ええ、そうですね。
和田)
なるほどなるほど。OKです。
今のは、当事者、健康起因事故を起こした当事者のドライバーのことを色々報告する、そういった細かいことをね。「健康診断を受けてるのか」「精密検査を受けてるのか」「治療しているかどうか確認しているのか」「1か月の勤務状況を“ちゃんと大丈夫か”と見ているのか」「勤務上の配慮をしているのか」っていう、この5つを事故をやらかした人に関しては報告しなければならないっていうことなんですけど、もう1つあるんですね。
「事故を起こしていない“すべてのドライバーに対して”どんな意見交換をやってますか?」っていうところも今回書かなければいけないっていうことで。
だからなかなかね、やっぱり結局はそれ(健康起因事故)は(当事者)1人じゃない、会社でどういう健康管理体制をやっているのかっていうのを、健康起因事故を起こしちゃうと国交省、運輸局はそこを見ていくっていうことなんで。
瀬尾)
う~ん。
和田)
そこのところの内容は、今から話す内容なんです。
まずは一つ目は「健康管理の指導状況はどうですか?」ですね。これは健康診断を受けて再検査の人は行かせているっていう話なんで、これはしっかりやっていると思うんで、第一名誠さんの場合は問題ないのかなっていう感じはします。
瀬尾)
はい。
和田)
2個目なんですよ。問題はここから。「健康上の要注意者の状況」。
あと3個目。「健康上の要注意者に対する管理状況」。
こういったことを、要は「健康上で注意しなければいけないドライバーさん」っていうのを「ちゃんと会社で色分けして」というかですね、「分かっていますか?」っていう、ここまでやっぱり健康起因事故を起こすと聞かれるわけなんですけど。
どうですか?瀬尾さんのところはドライバーさんは30~40人くらいですよね?たしか。
瀬尾)
はい。
和田)
どうですか?色分け出来ていますか?「健康なドライバーさん」とちょっと「色々疾患が増えてきたドライバーさん」っていう形なんですけど。
瀬尾)
そうですね。独自の点数をつけて、「点数分け」をしていますね。色分けというより。
和田)
あ~、なるほどなるほど。
瀬尾)
はい。
和田)
例えば血圧だったら、血圧が140以上とか130だったら何点とかっていう・・・
瀬尾)
何点とか、そうですね。はい。
和田)
では一覧表を見れば、点数が多い人が色んな疾患が多いってことで・・
瀬尾)
そうですね。
和田)
さっきの「健康上の要注意者」に当たるっていうのが一目分かるっていう話ですか?
瀬尾)
そういうことですね。
和田)
あ~、なるほど。そういう形でやっている訳ですね。だから、さっきの「配慮しなければいけないドライバー」っていうのは「血圧が高い人」とかってことが分かっているしっていうことで、そういう意味では、第一名誠さんとしては全体的には健康管理は出来ているのかなっていう感じがしますけどね。
なかなか普通はそこまでやっぱり出来ていないので、健康起因事故を起こすと「起こしたドライバー以外の“普通のドライバー”もいずれ(事故を)起こさないかどうかまでの管理体制が出来ているのか」っていうところまで聞かれるっていうのが、今回の「わざわざSASの疑いの段階」でまで、「もし事故を起こして運転が出来ないのであれば報告しろ」っていうことで、やっぱりどんどんこの辺のところも指導が厳しくなってくるんじゃないのかなっていう感じがしますよね。
瀬尾)
はい。
和田)
だから瀬尾さんのところも、多分「SAS」だけではなくて、たしか前のYouTubeでも「脳ドック」をやっているっていう話は仰っていましたんでね。
瀬尾)
そうですね。はい。
和田)
全て、健康診断以外のそういう付属するもの(検査)もこれからやっていって、そういうチェック、要注意者で選ばれているような人に対してオプションで色々管理していくっていう形が大事なのかなって感じがしますけどね。
ドライバーさん、どうですか?あんまり受けたいっていう人はいないですか?「僕も受けたいです!」とか、SASのそういうの(検査)受けたいです!」とか。「脳ドック受けたいです!」って(言う人は)いないですか?
瀬尾)
「SAS」はみんな嫌がるんですけど、「脳ドック」は「(検査を)受けさせてもらえるならぜひ」っていう人が多くなりましたね。
和田)
「脳」は怖いんでしょうね。やっぱり。
瀬尾)
ええ。多分そういう機会じゃないと自分からは受けられない、と。これに関しては。
和田)
高いですしね。
瀬尾)
そうなんですよ。
和田)
愛知県だと5万円ぐらいかかるんじゃないかなって気がしますけど。
瀬尾)
「費用を(笑)(会社で)みてもらえるんだったら・・・
和田)
(笑)
瀬尾)
・・・ぜひ受けたいです」っていう意見が多いですね。
和田)
でも奥さんとかがいれば、旦那の医療費は会社である程度もってくれると喜ぶでしょうね。
瀬尾)
やっぱり、はい。
和田)
「第一名誠さんが出してくれるなら助かるわ~」みたいな感じに多分なってくると思うんで。
瀬尾)
ええ。
和田)
いいと思います。ホントに(検査を)やりたい人を受けさせていくっていうのは、会社の費用もあるんでやれる範囲内でどんどん進めて行けば、それが健康経営の本来のあり方なのかなっていう感じがしますけどね。
瀬尾)
はい。
和田)
分かりました。今日は色々とすみません、細かい「点数付けをしている」っていうお話までして頂いて、色々と参考になりました。ありがとうございました。
瀬尾)
ありがとうございました。